岩手日報正月特集(2011.1.1)

July 7, 2016

現代社会は強迫観念的にアイデンティティーを求めるが、日常感覚は外部からの情報の集積により受動的に成立するので、そこで見つける自己はどこか不安定だ。だから私は、他者に依存しない身体感覚と精神を物質と重ねることで世界とつながろうとする。

ある時、油絵の具が滲んで色と形の境界が曖昧になっていく様をみて、ミクロとマクロの間で揺らめくイメージに感覚が開かれていくのを感じた。認識を超えた美が生じたとき、精神は自然とリンクしていく感覚を覚え、私自身その絵に魅了されていく。

人間と世界の本質、その周辺で生じる感情が私を絵に駆り立てる。感情は循環するものだと思う。よろこびはよろこびに。痛みは痛みに。戦争や犯罪(冤罪も)など、不幸がなくならない。そこでは負の感情だけが連鎖的に増幅していく。そこに想像力はない。アートは心の傷を生む欲望や憎しみから私たちを解放してくれる。私たちの幸福のため、俗性によって失われた感覚を解放することはアートが担う希望だ。

私が絵にこめた思いがあらゆる人に正確に伝わるのはおそらく不可能だから、それはとても非力で祈りに近いものなのかもしれないが、世界と分かり合うための希望でもある。

 

 

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